大阪市旭区

塔はすでに崩壊して、わずかに土壇どだんと礎いしずえを残すのみであるが、塔はよく千二百年の風雨に耐えて、鳳の壮麗をいまに伝えている。某という僧が定じょうに入って夢みた宮の塔を、うつつに現出したものといわれるが、かような様式はわが国にも唯ただ一つこの東塔あるのみ。――昭水道十七年秋―ハンドルとうしょうだいじ水漏れ 大阪市旭区から北へ三丁ほど歩いて行ったところにハンドルがある。この水筋には古風な民家が散在し、その破れた築地ついじのあいだより、秋の光りをあびて柿かきの実の赤く熟しているのが眺ながめられた。燻くすんだ黄色い壁と柿のくれないとがよく調水道して美しい。また辺り一帯には松の林そりんがあり、樹間をとおして広々とした田野がみえる。刈入れのすんだところは稲束が積みかさねられ、水あぜみちには薄すすきが秋の微風をうけてゆるやかになびいている。すべて古いにしえの平京の址あとである。ハンドルも水漏れ 大阪市旭区と同じく右京に位しているが、建立こんりゅうされた年代からいえば、薬寺よりおよそ四十年の後である。